後遺症の悲劇

2025年10月
  • 後遺症診断書作成の依頼とポイント

    知識

    交通事故や労災事故によって負傷し、長期にわたる治療を経て「症状固定」と診断されたにもかかわらず、身体に何らかの症状が残存してしまった場合、それが「後遺症」として認められる可能性があります。この後遺症の存在と程度を医学的に証明し、損害賠償請求を行う上で不可欠となるのが「後遺症診断書」、正式には「後遺障害診断書」です。この書類の作成を主治医に依頼する際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、後遺症診断書は、必ず症状固定と判断された後に作成を依頼します。症状固定とは、これ以上医学的な治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指し、この時点で残った症状が後遺障害として評価の対象となります。治療中に依頼しても、その時点での評価は暫定的なものとなり、後遺障害の認定には繋がりません。主治医に診断書の作成を依頼する際は、これまでの治療経過を最もよく理解している医師に依頼することが原則です。通常は、最も長く治療を受けてきた、あるいは症状固定と判断した医師が担当します。依頼時には、単に「後遺症診断書を書いてください」と言うだけでなく、どのような目的で、どのような情報を記載してほしいのかを明確に伝えることが重要です。例えば、自賠責保険の後遺障害認定のために必要であること、具体的にどのような症状が残っているのか、その症状が日常生活や仕事にどのような影響を与えているのかを詳しく伝えるべきです。医師は、患者の申告に基づいて診断書を作成するため、患者自身が残存する症状を正確かつ具体的に伝えることが不可欠です。痛みやしびれの部位、性質、程度、頻度、増悪・寛解因子、そして、何ができなくなってしまったのか(例:重いものが持てない、長時間座っていられない、特定の動作で痛みが生じるなど)を詳細に説明しましょう。日頃から症状の経過をメモしておくことも有効です。また、医師には、これまでの治療記録、画像検査の結果(レントゲン、MRI、CTなど)、神経学的検査の結果などを確認してもらい、診断書に客観的な他覚所見を盛り込んでもらうよう依頼することが重要です。