眼内に小さなレンズを挿入することで視力を回復させるICL手術は、多くの人にとって眼鏡やコンタクトレンズから解放される魔法のような手段に見えます。しかし、医療行為である以上、そこには必ずリスクや後遺症の可能性がつきまといます。術後に最も多くの患者が経験する現象の1つにハローとグレアがあります。ハローとは暗い場所で街灯や車のヘッドライトの周囲に光の輪が見える現象であり、グレアとは光がぎらついて眩しく感じる現象を指します。これらはICLレンズの中央に開けられた小さな穴が光を回折させるために起こるもので、手術の仕組み上、避けられない側面があります。多くの場合は数ヶ月から1年程度の時間をかけて脳が慣れていきますが、夜間の運転を頻繁に行う職業の人にとっては、この光の見え方の変化が深刻なストレスになることもあります。また、眼内という非常に繊細な場所に異物を入れるため、角膜内皮細胞の減少という長期的な懸念も無視できません。角膜内皮細胞は角膜の透明度を維持するために不可欠な細胞であり、一度死滅すると再生しません。手術の手技やレンズの接触によってこの細胞が急激に減少すると、将来的に角膜が濁る水疱性角膜症を引き起こし、角膜移植が必要になるリスクさえ孕んでいます。さらに、確率は低いものの、術後の感染症は最も恐ろしい合併症の1つです。眼内炎を発症すれば、最悪の場合、失明に至る可能性もあります。そのため、術後の点眼薬の使用や衛生管理は極めて厳格に行う必要があります。白内障や緑内障の発症リスクについても、レンズが水晶体や虹彩に干渉することで、通常よりも早い年齢で進行するケースが報告されています。最新の穴あきレンズの登場により、これらのリスクは大幅に軽減されましたが、ゼロになったわけではありません。術前の検査において、眼内のスペースが十分に確保されているかをミリ単位で測定するのは、こうした合併症を防ぐための極めて重要な工程です。視力が2.0になったとしても、眼の健康そのものが損なわれてしまっては本末転倒です。ICLは取り外しが可能という可逆性をメリットとして謳っていますが、再手術自体も眼に大きな負担をかけることを忘れてはなりません。患者は目先の視力向上という利益だけでなく、10年後、20年後の自分の眼がどのような状態にあるかを想像し、医師のカウンセリングを通じて納得のいく選択をする責任があります。