インフルエンザが治ったはずなのにめまいが続くとき、一体「何科」を受診すれば良いのかという迷いは、多くの患者さんが抱く最初のハードルです。適切な診断と治療を受けるためには、自分の症状の「質」を見極めて、最初の相談先を選ぶことが早期回復の鍵となります。まず、自分のめまいがどのようなタイプかを観察してください。もし「周囲がぐるぐる回る」「特定の方向に頭を動かすと激しい揺れが起きる」という回転性のめまいがメインであれば、第一選択は間違いなく耳鼻咽喉科です。耳鼻咽喉科では、ENG(電気眼振図)や聴力検査を用いて、耳の奥にある前庭器官や前庭神経に物理的なダメージや機能低下がないかを精密に調べることができます。インフルエンザ後の前庭神経炎や、ウイルスをきっかけとした良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、耳鼻科的な処置や運動療法によって劇的に改善することが多いです。一方、めまいの質が「足元がふわふわする」「頭がボーッとして意識が遠のく感じがする」「立ち上がった時に目の前が暗くなる」という浮動性や眼前暗黒感である場合は、総合内科や循環器内科の受診が適しています。これらは心臓の拍出量の低下や、血管の調整機能不全、あるいはインフルエンザ後の重度の貧血などが原因である可能性が高いからです。また、もしめまいに加えて、激しい頭痛や手足のしびれ、二重に見える、言葉がうまく出ないといった「脳の症状」を伴う場合は、一刻も早く脳神経外科や脳神経内科を受診しなければなりません。インフルエンザ後の脳炎や微小な血栓といった、稀ではあるものの重大な疾患が隠れているリスクがあるからです。さらに、身体的な検査で異常がないにもかかわらず、人混みやストレス下でめまいが悪化し、不安感が強い場合は、心療内科の助けを借りることも検討すべきです。インフルエンザという強烈なストレス体験が自律神経を疲弊させ、「めまい症」という心身症を定着させてしまうことがあるからです。病院を受診する際は、1インフルエンザの発症時期と期間、2めまいの開始時期、3どのような動作で起きるか、4他にどのような不調があるか、の4点をまとめたメモを持参すると、医師の診断効率が大幅に上がります。迷った場合は、まずはかかりつけの内科医に相談し、そこから適切な専門科へ紹介状を書いてもらうのが、日本の医療システムにおいて最も確実で無駄のないルートです。適切な診療科に出会うことが、止まった時間を動かすための最初の一歩となります。