交通事故や転倒で肩腱板損傷を負い、後遺障害申請をしたものの非該当となった場合、多くの人は「国が認めてくれないのだから、たいした怪我ではないのだろう」と誤解して治療をやめてしまいます。しかし、これは将来の健康を損なう非常に危険な考え方です。自賠責の非該当という判断は、あくまで保険金の支払基準に達していないという事務的な評価に過ぎず、医学的な損傷が消えたわけではありません。腱板損傷を放置すると、損傷部位が次第に広がる「断裂サイズの拡大」が起こります。最初は小さな不全断裂だったものが、日常の動作で負荷がかかり続けることで全断裂へと進行し、数年後には肩が全く上がらなくなる偽性麻痺の状態に陥るリスクがあります。さらに恐ろしいのが、肩関節症への移行です。腱板が正常に機能しなくなると、上腕骨頭が正常な位置を保てず、周囲の骨や軟骨と異常に衝突し始めます。これにより関節の軟骨がすり減り、激しい変形性肩関節症を引き起こすと、最終的には人工関節置換術などの大規模な手術が必要になることもあります。非該当と言われたからといって、あなたの肩が健康である保証はどこにもありません。むしろ、認定が得られなかった時こそ、自分の身体を守るために徹底したリハビリや、場合によっては手術を検討すべき時期なのです。特に夜間痛がある場合は、炎症が慢性化しているサインです。適切なリハビリを行えば、周りの筋肉を鍛えることで腱板の機能を補うことが可能になります。また、最近では再生医療(PRP療法など)という選択肢も出てきており、手術をせずに腱の修復を促す試みも行われています。後遺障害の等級は将来の経済的な支えになりますが、それ以上に大切なのは、一生使い続ける自分の肩の機能です。非該当という結果に惑わされず、専門医の指導の下で長期的なケアを続けることが、10年後、20年後に「あの時しっかり治しておいてよかった」と思える唯一の道なのです。健康は数字や等級で決まるものではなく、日々の丁寧なメンテナンスと自身の意志によって守られるものです。
肩腱板損傷を放置するリスクと将来の健康への影響