私はこれまで健康だけが取り柄だと思って生きてきましたが、40歳を目前にして経験したインフルエンザは、これまでの常識を覆すほど過酷なものでした。5日間の高熱を乗り越え、解熱剤なしで平熱に戻った時、私は「これでようやく仕事に戻れる」と安堵しました。しかし、本当の地獄はそこから始まったのです。出社初日の朝、ベッドから起き上がろうとした瞬間に、天井が猛スピードで回転し、私はそのまま布団の上に崩れ落ちました。吐き気を伴う激しい回転性のめまいで、目を開けていることすらできません。インフルエンザの後遺症でこれほどまでの症状が出るとは夢にも思っておらず、私は再発したのかとパニックになりました。病院へ連絡すると、インフルエンザ後のめまいは珍しくないとのことで、数日は家で安静にするよう指示されました。それから1週間、私の世界は常に揺れ動いていました。少し頭を動かすだけで、景色がぐにゃりと歪み、真っ直ぐ歩こうとしても右側に吸い寄せられるようにふらついてしまいます。特に困ったのは、食事の準備や入浴といった日常の些細な動作です。キッチンに立っているだけで冷や汗が止まらず、結局は家族の助けなしには生活が送れない状態でした。職場には多大な迷惑をかけているという申し訳なさと、このまま一生治らなかったらどうしようという絶望感が交互に押し寄せ、精神的にも追い詰められました。そんな私を救ってくれたのは、同じ経験をした友人からのアドバイスでした。彼女は「今は身体が一生懸命、神経の修理をしている最中だから、戦わないで身を任せたほうがいい」と言ってくれました。その言葉を聞いてから、私は「治そう」と焦るのをやめました。昼間でも眠くなったら眠り、食事は消化の良いものをごく少量ずつ摂るようにしました。また、耳鼻科で処方されためまいを抑える薬を服用しつつ、室内で座ったまま目だけを左右に動かす「平衡リハビリテーション」を1日3分だけ取り入れました。すると、発症から10日目を過ぎたあたりで、朝の回転する感覚が少しずつ穏やかになっていくのを感じたのです。1ヶ月が経過した今、ようやく以前と同じように歩けるようになりました。振り返ってみれば、あのめまいは、ウイルスと戦い抜いてボロボロになった私の身体が発していた、究極の休息命令だったのだと思います。インフルエンザという病の恐ろしさは、熱そのものよりも、その後に残るこうした見えないダメージにあることを痛感しました。もし今、同じようにめまいに震えている人がいたら、どうか自分を責めないでください。あなたの身体は、今も懸命に修復を続けています。その頑張りを信じて、今はただ静かに、時間が過ぎるのを待つことが、最高の治療法になるはずです。