交通事故や転倒などで肩を強く打ち、肩腱板損傷という診断を受けたにもかかわらず、自賠責保険の後遺障害認定で非該当という結果が出るケースは後を絶ちません。肩腱板損傷は、肩を動かすための4つの筋肉の腱が切れたり傷ついたりする非常に深刻な怪我ですが、なぜこれが認められないのでしょうか。その最大の理由は、損傷が事故によって生じたものか、あるいは加齢による変性によるものかの区別が非常に困難であるという点にあります。医学的には、腱板は40代を過ぎると自然に弱くなり、自覚症状がなくても微細な断裂が見られることは珍しくありません。審査側は、事故の衝撃が腱を断裂させるほど強かったのか、あるいは元々あった損傷が事故をきっかけに痛み出しただけではないのかという疑いを持ちます。非該当を避けるためには、事故直後の画像診断が極めて重要です。受傷から1週間以内に撮影されたMRIで、腱板の周囲に炎症や出血、むくみ(骨髄浮腫)が確認できれば、それは新鮮な外傷である強い証拠となります。逆に数ヶ月経ってから撮影された画像では、それが事故によるものか老化によるものか判別できず、非該当とされる確率が飛躍的に高まります。また、可動域制限、つまり肩がどこまで上がるかという数値も重要ですが、腱板損傷の場合は痛みはあるが腕は自力で上げられるというケースが多く、これが機能障害としての認定を難しくしています。12級の機能障害を目指すなら、患側が健側の4分の3以下に制限されている必要がありますが、それを満たさない場合は14級の神経症状としての認定を目指す戦略に切り替える必要があります。しかし、単に痛いと訴えるだけでは14級すら認められません。通院実績が半年以上あり、一貫した症状の訴えがカルテに残っていること、そして腱板の不全断裂などが画像で客観的に確認できることが最低条件となります。後遺障害診断書の記載内容も重要であり、医師に他覚的所見として画像上の異常を明記してもらう必要があります。非該当の通知を受け取ったとしても、異議申し立てという手段が残されていますが、そのためには新たな医学的証拠や、専門医による意見書を用意しなければなりません。肩腱板損傷は、日常生活や仕事に多大な支障をきたす怪我です。その苦しみが見過ごされないためには、初期段階からの適切な検査と、認定の仕組みを熟知した上での立証活動が不可欠なのです。
肩腱板損傷で後遺障害が非該当になる理由と対策