肩腱板損傷を抱える患者さんが後遺障害の申請をする際、最も信頼すべき書類であるはずの後遺障害診断書が、実は非該当の原因になっていることが多々あります。医師は治療を目的としていますが、認定に必要な法的な要件については必ずしも精通していません。そのため、非該当を避けるための診断書作成には、いくつかの黄金律が存在します。第1のルールは、傷病名の正確性です。単に「肩関節周囲炎(五十肩)」と書かれてしまうと、事故による外傷ではなく加齢によるものと判断され、ほぼ確実に非該当となります。必ず「肩腱板断裂」や「肩腱板損傷」と、損傷部位を特定した名称を使ってもらう必要があります。第2のルールは、他覚的所見欄の充実です。ここに「MRIにて棘上筋腱の連続性が消失している」や「不全断裂に伴う液貯留が認められる」といった、具体的な画像所見を医師の言葉で書き込んでもらうことが決定的な意味を持ちます。空欄のまま提出することは、非該当への特急券を受け取るようなものです。第3のルールは、自覚症状と他覚的所見の一致です。診断書の冒頭にある自覚症状欄に「肩の挙上困難、夜間痛」と書くなら、それに対応する画像やテスト結果が後の欄に必ず示されていなければなりません。ここで不一致があると、審査側は信頼性を疑います。第4のルールは、症状固定のタイミングです。受傷から3ヶ月程度で診断書を書いてもらうのは早すぎます。腱板損傷はリハビリに時間がかかるため、最低でも6ヶ月以上の加療を経てから作成を依頼すべきです。あまりに早い申請は、将来的に治る可能性があると判断され、非該当の理由にされます。第5のルールは、弁護士による事前のチェックです。医師が書いた診断書をそのまま保険会社に出す前に、交通事故に詳しい弁護士に見てもらい、不足している記述や修正すべき箇所がないか確認してもらいましょう。必要であれば、弁護士から医師へ宛てたお願い文書を作成し、必要な医学的観点を盛り込んでもらいます。医師と良好な関係を保ちつつ、法的なエビデンスとしての診断書を完成させる。この共同作業こそが、非該当を回避し、正当な等級認定を勝ち取るための最大の秘訣なのです。